第6話「DeFiの罠」

信頼ゼロ社会を生きるWEB3.0原理主義エンジニアの奇妙すぎる日常に翻弄される僕～フルノードを立てなきゃDAppも使えません！

注

この物語は、WEB3.0の世界を楽しく学ぶことを目的に、生成AIを活用して執筆されています。技術的な情報の正確性には細心の注意を払っていますが、その内容がすべて真実であることを保証するものではありません。あくまで学習の補助ツールとして、肩の力を抜いてお楽しみください。

登場人物紹介

私: DTPオペレータからエンジニアに転職したばかりの新米開発者
D氏: 40代半ば、極度の警戒心を持つWEB3.0原理主義者

D氏から受け取ったUSBメモリを自宅で開いた瞬間、私は思わず息を呑んだ。

「これは…」

画面には、私が興味を持っていた「年利30%保証」を謳うDeFiプロトコルの徹底的な分析レポートが表示されていた。コードの脆弱性、トークン発行計画の矛盾点、開発者ウォレットの不審な動き…。まるで刑事ドラマの捜査資料のように緻密な分析だった。

レポートの最後には、赤字で「結論：典型的なポンジスキーム。崩壊は時間の問題」と書かれていた。

私は頭を抱えた。このプロトコルに少額ながら投資しようと考えていたのだ。前回のスマートコントラクト事件で、D氏の警告を軽視することの危険性を学んだばかり。今回は素直に彼の分析を信じるべきだろう。

USBには暗号化されたメッセージも含まれていた。

明日19時、秋葉原駅電気街口。いつものカフェではない。「DeFiについて話すなら、壁に耳があるカフェは危険すぎる」暗号資産を少額持参せよ。

翌日、指定された時間に秋葉原駅に到着すると、D氏がすでに待っていた。彼はいつもの黒いジャケットではなく、派手なアロハシャツを着ていた。変装だろうか。

「遅れていない。良い」

彼は周囲を警戒するように見回し、小声で言った。

「私についてこい。話しながら歩くな」

私は黙ってD氏に従った。彼は雑踏の中を巧みに進み、人目を避けるように路地に入った。数分後、古びたビルの地下への階段の前で立ち止まった。

「ここだ」

階段を降りると、小さな看板があった。「Crypto Bar SATOSHI」。ドアを開けると、薄暗い照明の落ち着いた空間が広がっていた。カウンター席だけの小さなバーで、客は私たち以外にいなかった。

「いらっしゃい、D」

バーテンダーがD氏に声をかけた。どうやら顔なじみのようだ。

「いつもの場所を」

D氏はカウンターの端の席に座り、私も隣に腰掛けた。

「ここは安全だ」D氏は小声で言った。「オーナーは古くからの知人で、暗号資産での支払いに対応している。監視カメラもない」

バーテンダーがカクテルを運んできた。「新しい友人か？」

D氏はうなずいた。「彼はDeFiの危険性について学びに来た」

バーテンダーは笑みを浮かべた。「それなら、君は最高の先生に出会ったね」

D氏はノートPCを開き、私が興味を持っていたDeFiプロトコルのウェブサイトを表示した。

「まずは基本から。DeFiとは何か？」

「分散型金融ですよね。中央集権的な仲介者なしに金融サービスを提供する…」

「半分正解だ」D氏は言った。「だが、多くのDeFiプロジェクトは『分散型』を名乗りながら、実は高度に中央集権的だ。開発者の匿名性、コントラクトのアップグレード権限、トークン分配…全てが中央集権的な権力構造を隠している」

彼はウェブサイトのトップに表示された「年利30%保証」の文字を指さした。

「これを見て何を思う？」

「正直、魅力的だけど、高すぎて怪しいとも思います」

「その直感は正しい」D氏は満足げにうなずいた。「伝統的金融では、リスクとリターンは比例する。年利30%のリターンがあるなら、それに見合うリスクがあるはずだ。だが、このプロジェクトはリスクについて一切言及していない。これだけでも詐欺の可能性が高い」

D氏はドリンクを一口飲み、続けた。

「では、この『30%』はどこから来るのか考えてみよう」

彼はホワイトペーパーのPDFを開き、トークノミクスのセクションを表示した。

「ここだ。毎日0.082%のトークンが新規発行され、ステーキング報酬として分配される。これが年利30%になる。つまり、この高利回りの正体は単なるインフレーションだ」

「インフレーション？」

「そう。新しいトークンを刷りまくっているだけだ。中央銀行と何も変わらない」D氏は皮肉を込めて言った。「価値の創出ではなく、希薄化だ。全員が同時に引き出そうとしたら、価格は暴落する」

彼はさらにコードを分析し始めた。スマートコントラクトの脆弱性、ガバナンストークンの分配の偏り、開発者の匿名性…次々と問題点を指摘していく。

「そして最大の問題は、これがポンジスキームの特徴を全て満たしていることだ」

D氏は指を折りながら説明した。

「一つ、異常に高い利回り。二つ、持続不可能なトークノミクス。三つ、新規参入者の資金で既存参加者へのリターンを支払う構造。四つ、不透明な収益源」

彼は厳しい表情で私を見た。

「君はこれに投資するつもりだったのか？」

私は恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。「少額だけ…試してみようかと」

D氏は深いため息をついた。「少額でも危険だ。一度悪質なコントラクトと接続すれば、ウォレット内の全資産が危険にさらされる」

バーテンダーが新しいドリンクを運んできた。D氏は「暗号資産で」と言い、QRコードを表示した。バーテンダーはそれをスキャンし、取引を確認した。

「見たか？これが本来のWEB3.0の使い方だ。中間者なしの直接取引」

D氏は私に向き直り、「では実践だ」と言った。「このDeFiプロトコルのリスクを自分で分析してみろ。30分やる」

私はノートPCを借り、D氏の指導を思い出しながら分析を始めた。トークノミクス、コード、開発チームの背景…。

30分後、私は発見したリスクを報告した。

「まず、ステーキング解除に7日間のロックアップ期間があります。緊急時に資金を引き出せません。次に、開発者ウォレットに全トークンの40%が配分されていて、徐々に解放されるスケジュールですが、その検証方法がありません。そして、スマートコントラクトのアップグレード権限が単一のマルチシグウォレットに集中していて…」

D氏は珍しく笑顔を見せた。「良い。まだ見落としはあるが、基本的な危険信号は捉えている」

その瞬間、D氏のスマートフォンが振動した。彼は画面を見て、表情が一変した。

「来たか…」

彼は私にスマートフォンを見せた。そこには、私たちが分析していたDeFiプロトコルの緊急アナウンスが表示されていた。

「『システムアップグレードのため、一時的にステーキング解除機能を停止します』…これは…」

「ラグプルの前兆だ」D氏は冷静に言った。「彼らは逃げる準備をしている」

彼は素早くノートPCでブロックチェーンエクスプローラーを開き、プロジェクトの開発者ウォレットを追跡し始めた。

「見ろ。大量のトークンが中央集権型取引所に送られている。彼らは現金化を始めた」

私は画面に釘付けになった。リアルタイムで詐欺が進行しているのを目の当たりにしている。

「もし君が資金を預けていたら、今頃全てを失っていたところだ」

D氏の言葉に、私は冷や汗を感じた。彼の警告を聞いていなければ、私も被害者の一人になっていたかもしれない。

「DeFiは革命的な技術だ」D氏はドリンクを飲み干しながら言った。「だが、同時に最も危険な金融実験でもある。規制も保険も、セーフティネットも存在しない。自分の資産は自分で守るしかない」

彼は私に向かって真剣な表情で続けた。

「高利回りの裏には必ず相応のリスクがある。この原則は、伝統的金融もDeFiも変わらない。『年利30%保証』などと言われて飛びつくのは、断崖絶壁からの飛び降りに等しい」

私はうなずいた。「でも、本当に信頼できるDeFiプロジェクトもあるんですよね？」

「もちろんだ」D氏は認めた。「だが、それを見分けるには知識と経験が必要だ。まずは基本を学べ」

彼はポケットから小さなデバイスを取り出し、私に手渡した。

「これは緊急時用だ。暗号化された通信が可能で、インターネットに接続せずにトランザクションに署名できる。次回は分散型取引所の仕組みと安全な使い方について教える」

私はそのデバイスを受け取り、感謝の言葉を述べた。

「ところで、D氏はこのバーでいつも何を飲んでるんですか？」

D氏は珍しく口元を緩めた。「『Trustless Martini』だ。バーテンダーが特別に作ってくれる。材料は全て自分で確認したものだけを使用している」

バーテンダーが笑いながら割って入った。「彼は最初、私が使う水まで検査したんだ。『中央集権的な水道水は信用できない』ってね」

私は思わず笑った。D氏の極端な警戒心は時に滑稽だが、今日の出来事で、その姿勢が時に命を救うことを学んだ。

帰り道、D氏の言葉が頭に残っていた。「DeFiの世界では、銀行のような規制も保険もない。自分の資産は自分で守るしかない」

考えてみれば、私たちが日常的に利用している銀行には、預金保険という安全網がある。銀行が破綻しても、一定額までは保護される。クレジットカードが不正利用されれば、届け出ることで補償を受けられる。銀行で誤送金しても、場合によっては組戻し手続きができる。

しかしDeFiの世界では、トランザクションの取り消しは不可能。送金先を間違えれば、それだけで資産は永遠に失われる。スマートコントラクトにバグがあれば、誰も補償してくれない。

「中央集権的な金融機関は信頼できない」というD氏の主張は理解できる。2008年の金融危機や、度重なる個人情報漏洩事件を思えば、その警戒心も納得できる。しかし同時に、中央集権的なシステムには「人間的な救済」という側面もあるのだ。

DeFiの「Code is law（コードは法）」という冷徹な原則と、従来の金融の「人間による判断と救済」。どちらにも長所と短所がある。D氏は前者を信じ、多くの人は後者に依存している。

私はどちらの世界に生きるべきなのだろう？あるいは、その両方の良いところを取り入れる道はないのだろうか？

WEB3.0の世界は危険に満ちているが、同時に無限の可能性も秘めている。その両面を理解することが、この新しい世界を生き抜く鍵なのだろう。

私は自宅に戻ると、D氏から以前もらった本『暗号技術の基礎』を開き、勉強を続けた。

ページをめくりながら、今日の出来事を振り返る。もし私があのDeFiプロトコルに投資していたら、今頃は資産を失っていたかもしれない。D氏の極端な警戒心を笑っていた自分が、今は恥ずかしく思える。

暗号技術は確かに難解だ。楕円曲線暗号や零知識証明など、数学的な概念が次々と登場する。MetaMaskのようなウォレットアプリが全てを隠蔽してくれるおかげで、これらを理解せずとも暗号資産を利用することはできる。

しかし、それは本当に「利用している」と言えるのだろうか？

DTPオペレータ時代、私は印刷物の誤字脱字を見つけるのが仕事だった。一見完璧に見える文章の中に潜む小さなミスを発見する目を養った。今、その経験が新たな形で生きようとしている。一見安全に見えるスマートコントラクトの中に潜む「死角」を見抜く目として。

本のページを一枚一枚めくりながら、私はD氏の言葉を思い出した。「コードだけが事実だ」

WEB3.0の世界は、自分の目で確かめ、自分の頭で考え、自分の手で守る世界なのだ。それは時に孤独で厳しい道かもしれないが、その先には真の自由がある。

窓の外を見ると、東京の夜景が広がっていた。無数の光が織りなす景色は、まるでブロックチェーン上のトランザクションのように美しく、複雑で、そして途方もなく広大だった。

私はD氏と別れた後、すぐには帰宅する気になれなかった。今日の出来事を消化するために、少し時間が必要だった。

渋谷のとある小さなバーに立ち寄った。窓際の席からは東京の夜景が一望できる。人混みを避け、静かに考えをまとめるのに最適な場所だ。

カウンターで『暗号技術の基礎』を開きながら、ウイスキーのロックを一口。今日の出来事を振り返る。もし私があのDeFiプロトコルに投資していたら、今頃は資産を失っていたかもしれない。D氏の極端な警戒心を笑っていた自分が、今は恥ずかしく思える。

しかし、それは本当に「利用している」と言えるのだろうか？

本のページを一枚一枚めくりながら、私はD氏の言葉を思い出した。「コードだけが事実だ」

窓の外を見ると、無数の光が織りなす東京の夜景が広がっていた。ビルの明かりが点在する様子は、まるでブロックチェーン上のノードのように美しく、複雑で、そして途方もなく広大だった。

「お客さん、暗号の勉強ですか？」

ふと、バーテンダーの声に我に返る。彼は私の開いた本を見て微笑んでいた。

「ええ、まあ…」

「実は私も少しやってるんですよ」彼は声を潜めて言った。「このバーも暗号資産で支払えるんです。まだ公には宣伝してないけど」

思わず笑みがこぼれた。D氏が言っていた通り、WEB3.0の世界は確かに広がっている。

私は会計を済ませ、帰路についた。明日からまた、D氏の教えを胸に、この新しい世界を探索する旅を続けよう。

豆知識

ラグプル（Rugpull） 開発者が投資家の資金を持ち逃げする詐欺行為です。多くの場合、開発者は匿名で、スマートコントラクトに「バックドア」を仕込んでおき、十分な資金が集まったタイミングで全資産を引き出します。見分け方として、異常に高い利回り、匿名の開発チーム、監査報告書の欠如などが挙げられます。

一時的損失（Impermanent Loss） 流動性プールに資産を提供する際に発生する可能性のあるリスクです。例えば、ETH/USDCのペアに流動性を提供した後、ETHの価格が大幅に上昇した場合、プールから引き出せる資産価値は、単純にETHを保有していた場合より少なくなります。「一時的」と呼ばれるのは、価格が元に戻れば損失も解消されるためですが、実際には永続的な損失になることも多いです。

次回予告　「第7話：分散型取引所の闇」

「中央集権型取引所は論外だが、分散型取引所も油断できない」とD氏。秋葉原の隠れ家で、D氏は私に分散型取引所（DEX）の危険な真実を明かす。フロントランニング、サンドイッチ攻撃、MEV（Miner Extractable Value）…取引所の裏側で繰り広げられる見えない戦いの実態とは？「スリッページ設定は命を守るパラメータだ」と真剣な表情で語るD氏。彼が教える「安全な取引」の極意と、自作の「MEV防御システム」の驚くべき仕組みとは？そして、D氏が絶対に使わないという「あるDEX」の衝撃の理由とは…？

第6話おわり

信頼ゼロ社会を生きるWEB3.0原理主義エンジニアの奇妙すぎる日常に翻弄される僕 ～フルノードを立てなきゃDAppも使えません！

注

登場人物紹介