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第8話 「NFTの真実 前編:デジタル所有権の幻想」


信頼ゼロ社会を生きるWEB3.0原理主義エンジニアの奇妙すぎる日常に翻弄される僕 ~フルノードを立てなきゃDAppも使えません!

この物語は、WEB3.0の世界を楽しく学ぶことを目的に、生成AIを活用して執筆されています。 技術的な情報の正確性には細心の注意を払っていますが、その内容がすべて真実であることを保証するものではありません。 あくまで学習の補助ツールとして、肩の力を抜いてお楽しみください。


登場人物紹介

  • 私: DTPオペレータからエンジニアに転職したばかりの新米開発者
  • D氏: 40代半ば、極度の警戒心を持つWEB3.0原理主義者

第8話 「NFTの真実 前編:デジタル所有権の幻想」

D氏から受け取ったUSBメモリを前に、私は躊躇していた。

「このUSBを開く前に、必ずオフラインの環境で、自作のサンドボックスシステムを使え」

彼の言葉が頭に響く。普通なら過剰反応だと笑い飛ばすところだが、これまでの経験から、D氏の警告には必ず理由があることを学んでいた。

ノートPCからネットワークケーブルを抜き、Wi-Fiをオフにし、Bluetoothも無効化。さらに、古いノートPCをフォーマットして新たにOSをインストールした「エアギャップマシン」を用意した。これはD氏から教わった「重要なデータを扱う際の基本」だった。

USBを接続すると、一つのテキストファイルと暗号化されたフォルダが表示された。テキストファイルを開くと、そこには簡潔なメッセージがあった。

99%のNFTプロジェクトは詐欺か無知の産物だ。
真実を知りたければ、明日20時に以下の座標に来い。
暗号化フォルダのパスワードは、前回教えた「MEV防御システム」の初期化コマンドの最後の10文字だ。
このUSBは読んだ後、物理的に破壊することを推奨する。

座標を地図で確認すると、それは秋葉原から少し離れた古いビルの一室を指していた。

翌日、指定された時間に私はそのビルの前に立っていた。エレベーターはなく、薄暗い階段を5階まで上がると、廊下の突き当たりに無機質なドアがあった。ノックすると、中から「パスフレーズを言え」という声が聞こえた。

「また冗談ですか?」と私が言うと、ドアが開いた。

中に入ると、そこは予想外の光景だった。部屋の壁には様々なNFTアートが投影されており、中央には複数のモニターとサーバーラックが設置されていた。D氏は黒いパーカーを着て、モニターの前に座っていた。

「来たか。時間通りだ」

D氏の隣には見知らぬ女性がいた。

「彼女はM。NFTアーティストであり、暗号学者でもある。詳細は不要だ」

Mと呼ばれた女性は軽く会釈した。30代前半だろうか、鋭い眼差しと落ち着いた雰囲気を持っていた。

「今日はNFTの真実について話す」D氏は立ち上がり、壁に投影された画像を指さした。「あれが何に見える?」

それは、最近話題になっている高額NFTコレクションの一つだった。

「NFTですよね。確か先月、100ETH以上で取引されたやつです」

「違う」D氏は断言した。「あれは『404 Not Found』になる運命の画像だ」

彼はキーボードを叩き、そのNFTのメタデータを表示した。

「これを見ろ。このNFTのトークンIDはブロックチェーン上にあるが、画像データはどこにある?」

メタデータを見ると、画像はhttps://example-nft.io/metadata/1234.jsonというURLで参照されていた。

「中央集権的なサーバーですね」

「その通り」D氏は満足げにうなずいた。「このサーバーが停止したら、このNFTは何になる?」

「リンク切れの…」

「単なるゴミだ」D氏は言い切った。「数百万円を払って買ったのは、ブロックチェーン上のポインタだけだ。実際の資産は中央集権的なサーバーに依存している」

彼は別の画面を表示した。そこには「404 Not Found」と表示されたNFTの一覧があった。

「これらは全て、サービス停止やラグプルで消失したNFTだ。合計市場価値は数十億円に達する」

私は息を呑んだ。これほど多くのNFTが実質的に消失しているとは知らなかった。

「でも、最近のNFTはIPFSを使っていますよね?それなら分散型ストレージだから安全なのでは?」

D氏とMは顔を見合わせ、小さく笑った。

「IPFSの誤解だ」D氏は新しい画面を表示した。「IPFSは確かに分散型ストレージだが、誰かがそのデータをホストしなければ意味がない」

Mが口を開いた。彼女の声は落ち着いていて、説明は明快だった。

「IPFSの基本原理は、コンテンツアドレッシングです。つまり、データの内容そのものからハッシュ値(CID)を生成し、そのハッシュでデータを参照します。しかし、そのデータを誰かがホスト(ピン留め)していなければ、アクセスできません」

D氏は続けた。「多くのNFTプロジェクトは、IPFSゲートウェイを使ってメタデータをホストしているが、そのデータを永続的にピン留めする保証はない。ゲートウェイが停止すれば、データにアクセスできなくなる」

彼はキーボードを叩き、あるNFTプロジェクトのIPFSリンクを表示した。

「このCIDで参照されるデータは、現在どこにホストされているか分かるか?」

私は首を振った。

「それが問題だ」D氏は言った。「分からないんだ。誰がホストしているか不明で、いつ消えるか分からない。これが『分散型』と呼べるか?」

彼は立ち上がり、部屋の奥にあるサーバーラックに向かった。

「これが私の自作IPFSノードだ。24時間365日稼働し、価値あるNFTのメタデータを全てピン留めしている」

サーバーラックには複数のハードドライブが搭載されており、LEDが規則的に点滅していた。

「現在、約30TBのデータをホストしている。バックアップは3箇所の地理的に分散した場所に保管。電源は太陽光パネルとバッテリーでバックアップし、インターネット接続も冗長化している」

その徹底ぶりに、私は驚きを隠せなかった。

「なぜそこまで…?」

「デジタル考古学者としての使命だ」D氏は真剣な表情で言った。「将来、多くのNFTデータが消失する。それを防ぐのが私の役目だ」

Mが補足した。「IPFSの美しさは、誰でもデータをホストできることです。しかし、それは誰もホストしない可能性もあるということ。D氏のような人がいなければ、多くのデータは消失するでしょう」

D氏は自作の「NFT詐欺検出器」と呼ぶツールを見せてくれた。これは、NFTプロジェクトのメタデータ構造を分析し、リスクスコアを算出するシステムだった。

「このツールで、NFTの『真の分散度』を測定できる」彼は誇らしげに言った。「スコアが低いほど、中央集権的で危険だ」

彼はいくつかの有名NFTプロジェクトを分析し、驚くべき結果を示した。

「このプロジェクトは、分散度スコアが10点満点中2.1点だ。メタデータは中央サーバーに依存し、画像はAWSのS3バケットに保存されている。所有権の幻想を売っているに過ぎない」

次に、別のプロジェクトを分析した。

「こちらは少しマシだ。スコア4.3点。メタデータはIPFSにあるが、ピン留めは単一の組織に依存している。組織が消えれば、データも消える」

私は考え込んだ。「では、理想的なNFTとは?」

D氏は微笑んだ。「それが次の話題だ。オンチェーンNFTについて説明しよう」

彼はモニターに新しいNFTを表示した。一見するとシンプルな幾何学的なアートだが、よく見ると複雑なパターンが浮かび上がる。

「これは完全にオンチェーンで実装されたNFTだ。メタデータも画像も、全てブロックチェーン上に直接保存されている」

D氏はそのNFTのコントラクトコードを表示した。そこには、SVG(Scalable Vector Graphics)形式で画像データが直接埋め込まれていた。

「このNFTは、イーサリアムブロックチェーンが存在する限り、永続的に存在する。中央サーバーやIPFSのピン留めに依存しない」

Mが補足した。「これがNFTの本来あるべき姿です。真の分散型、真の永続性を持つデジタル資産」

D氏は続けた。「しかし、オンチェーンNFTには課題もある。ブロックチェーン上のストレージは非常に高価だ。1MBのデータを保存するのに数百万円のガス代がかかる」

彼は別のコードを表示した。

「そこで、データ圧縮とエンコーディングの技術が重要になる。SVGやBase64エンコーディング、さらには独自の圧縮アルゴリズムを使って、データサイズを最小化する」

私はメモを取りながら、この新しい概念を理解しようとしていた。D氏の説明は複雑だが、核心を突いている。

「NFTの本質は何だと思う?」D氏が突然質問してきた。

「デジタル資産の所有権証明…ですか?」

「半分正解だ」D氏はうなずいた。「しかし、より本質的には『検証可能な希少性』だ。デジタルデータは無限にコピー可能だが、ブロックチェーンによって希少性を証明できる。これがNFTの革命的な点だ」

彼は続けた。「しかし、その希少性が中央集権的なサーバーに依存していては意味がない。真のNFTは、完全に分散化され、永続的であるべきだ」

D氏は立ち上がり、部屋の奥にある金庫を開けた。そこから取り出したのは、小さなハードウェアウォレットだった。

「これから本物のNFTを見せよう」

彼はウォレットをコンピュータに接続し、複雑な認証プロセスを経て、特別なギャラリーアプリを起動した。

「これが私のコレクションだ。全て完全にオンチェーンで実装されたNFTばかりだ」

画面には、様々なスタイルのデジタルアートが表示された。抽象的な幾何学模様から、複雑なピクセルアート、さらには動的に変化するジェネラティブアートまで、多様なコレクションだった。

「これらは全て、ブロックチェーン上に直接保存されている。サーバーやIPFSに依存しない、真の永続的なデジタル資産だ」

D氏は一つのNFTを選び、そのコードを表示した。

「このNFTは、単なる静的な画像ではない。ブロックチェーン上で動作するアルゴリズムだ。所有者のアドレスや、現在のブロック高などの変数に応じて、表示が変化する」

私はその複雑さに圧倒された。これまで見てきたNFTとは全く異なる次元の技術だった。

「しかし、こうしたオンチェーンNFTは非常に希少だ」D氏は続けた。「ガス代の制約や技術的難易度から、全NFTの1%にも満たない」

Mが付け加えた。「それが価値を生み出します。希少性と技術的革新性が、これらのNFTを特別なものにしている」

D氏は時計を見た。「時間だ。今日はここまでだ」

彼は小さなUSBメモリを私に手渡した。

「これに、オンチェーンNFTについての詳細な資料を入れておいた。次回までに目を通しておけ」

「次回は?」

「NFTの真実 後編だ」D氏は微笑んだ。「オンチェーンの革命について話す。そして、私が密かに取り組んでいるプロジェクトも見せよう」

帰り際、Mは私に小さなカードを渡した。

「これはオンチェーンNFTへのアクセスキーです。自分で確かめてみてください」

カードには、イーサリアムアドレスとトークンIDが記されていた。

「ありがとうございます」

「気にしないで」Mは穏やかに微笑んだ。「D氏があなたを信頼しているなら、私も同じです」

D氏は私を部屋の出口まで案内した。

「次回までに、そのNFTを徹底的に調査しろ。コントラクトコードを読み、メタデータ構造を分析し、実装の詳細を理解しろ。それが次の講義の前提条件だ」

「分かりました」

「そして、今日学んだことを忘れるな」D氏は真剣な表情で言った。「デジタル所有権は、それを保証するシステムの強さと同じだけの価値しかない。中央集権的なサーバーに依存するNFTは、所有権の幻想を売っているに過ぎない」

帰宅後、私はMから受け取ったアクセスキーを使って、そのNFTを調査した。自宅のPCでEtherscanを開き、アドレスとトークンIDを入力すると、そのNFTのコントラクト情報が表示された。

驚いたことに、そのコントラクトは通常のNFT規格とは大きく異なっていた。メタデータも画像データも、全てコントラクト内に直接実装されている。しかも、単なる静的なデータではなく、動的に生成されるアルゴリズミックアートだった。

コードを読み解くと、このNFTは所有者のトランザクション履歴を分析し、その特徴に基づいて独自のパターンを生成する仕組みになっていた。つまり、所有者ごとに全く異なる見た目になるのだ。

「これが本物のNFTか…」

私は感嘆の声を漏らした。これまで見てきたNFTとは全く次元の異なる技術だった。中央サーバーに依存せず、完全にブロックチェーン上で自己完結している。これこそがD氏の言う「真の分散型デジタル資産」なのだろう。

さらに調査を進めると、このNFTには隠されたメッセージが埋め込まれていることに気づいた。特定の関数を呼び出すと、暗号化されたメッセージが返ってくる。

解読するには暗号学の知識が必要だったが、D氏から教わった基本的な手法を使って何とか解読に成功した。そこには次のように書かれていた。

真のデジタル所有権とは、誰にも奪われず、検閲されず、永続的に存在するものだ。
それを実現できるのは、完全にオンチェーンで実装されたコードだけだ。
次回は、その技術的詳細と哲学的意義について話そう。
座標:[暗号化された位置情報]
日時:来週同じ時間

私はノートPCを閉じ、窓の外を見た。夜空には星が輝いている。

D氏の言葉が頭に浮かんだ。「デジタル考古学者としての使命」。彼の極端な行動の裏には、デジタル資産の真の永続性と分散化を追求する深い哲学があった。

そして、彼の警告も理解できた。多くのNFTプロジェクトは、「分散型」を謳いながら、実は中央集権的なインフラに依存している。それは、WEB3.0の理念に反する偽りの約束だ。

私はスマートフォンを手に取り、人気のNFTマーケットプレイスを開いた。そこには数多くのNFTが並んでいるが、D氏の基準で見れば、そのほとんどは「404 Not Found」になる運命にあるのかもしれない。

「次は自分でオンチェーンNFTを作ってみよう」

私は決意した。D氏から学んだ知識を活かし、真の分散型デジタル資産を創造する。それは小さな一歩かもしれないが、WEB3.0の理念に近づくための確かな一歩になるはずだ。

モニターの青白い光に照らされた部屋で、私は新たなプロジェクトのコーディングを始めた。


豆知識

IPFS
InterPlanetary File Systemの略。分散型ファイルストレージシステムで、コンテンツアドレス指定を使用してファイルを識別します。従来のHTTPがサーバーの場所(URL)でコンテンツを指定するのに対し、IPFSはコンテンツ自体のハッシュ値(CID)で指定します。これにより、単一障害点がなく、検閲耐性のあるファイル共有が可能になります。ただし、データが実際にネットワーク上でホストされている必要があり、「ピン留め」されていないコンテンツは時間とともに消失する可能性があります。

NFTのメタデータ問題
多くのNFTプロジェクトでは、トークン自体はブロックチェーン上にありますが、実際のアートワークやメタデータは外部サーバーやIPFSに保存されています。これは「オフチェーンメタデータ」と呼ばれ、ブロックチェーンのストレージコストを抑えるために一般的に使用されています。しかし、これらの外部リソースが失われると、NFTは単なる「壊れたリンク」になってしまいます。実際に、サービス停止やラグプルにより、多くの高額NFTが「404 Not Found」状態になっています。

オンチェーンNFT
ブロックチェーン上に直接アートワークやメタデータを保存するNFT。外部サーバーやIPFSに依存せず、完全にブロックチェーン上で自己完結しています。技術的制約(ガスコスト、ストレージ制限)から実装が難しく、全NFTの中でも非常に希少です。代表的な例としては、Autoglyphs、Chainrunners、On-chainmonkeyなどがあります。これらは「真の永続性」を持ち、ブロックチェーンが存在する限り消失することはありません。

次回予告 「第9話:NFTの真実 後編:オンチェーンの革命」

D氏の秘密のアトリエで、オンチェーンNFTの技術的詳細と哲学的意義を学ぶ。SVGアート、データ圧縮技術、ガス最適化…そして、D氏が密かに取り組んでいる「究極のオンチェーンNFT」プロジェクトとは?デジタル所有権の本質と、WEB3.0が目指す真の分散化について、D氏の深い洞察が明かされる。


第8話 おわり